BBC出身のメディア研究者が語る、「デジタル・ジャーナリズムの挑戦」

dogotal report1左:ニックさん 右:デイヴィッドさん

9月11日に早稲田大学で行われた「デジタル・ジャーナリズムの挑戦~各国のメディア分析から」に参加をしてきました。

ゲストは、BBC出身のジャーナリストで現在オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所に勤めるデイヴィッド・レヴィーさんとニック・ニューマンさん。同研究所が発表する「Digital News Report」を元に、日米英などにおけるニュースの読まれ方について解説していただきました。

 
David Levy(デイヴィッド・レヴィー)
2008年よりオックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所所長
20年以上BBCでジャーナリスト、ラジオプロデューサー、テレビリポーターを務め、BBC World Service、BBC News and Current Affairsのエディターも務める。2007年までは特にBBCの公共政策・規制に携わる。専門は公共放送の近代化、公共サービス改革、デジタル技術の影響、英国およびヨーロッパのメディア所有と規制。最近ではサルコジ大統領が設立したフランス国営テレビの未来について考察する委員会のメンバーとしても活躍している。ジャーナリズムに関する著書、講演多数。オックスフォード大学で博士号取得。

Nic Newman(ニック・ニューマン)
ロイタージャーナリズム研究所シニア・リサーチ・アソシエイト
ジャーナリストおよびデジタル戦略家。BBCのインターネットサービスの方針作成に主要メンバーとして10年以上たずさわる。BBCニュースのウェブサイト創設メンバー。World Editorとして1997年から2001年まで国際報道を担当。BBCニュースのProduct Development Headとして、ブログ、ポッドキャスト、オンデマンドビデオなど新技術を導入。最近ではデジタルチームを率い、ニュース、スポーツ、天気、地域ニュースのためのウェブサイト、モバイルおよび双方向テレビのアプリケーションを開発した。また、BBC全般についてソーシャルメディア戦略やガイドライン作成に重要な役割を担う。 2014年Digital Reportをデイヴィッド・レヴィーと共著。

J-schoolホームページより)

 

Key Findings

最初にニックさんが、2014年のDigital News Reportの内容を解説してくれました。簡単にですがまとめてみたいと思います。(レポート全文

 
Mobiles and Tablets

ニュースを読むデバイスとして、スマートフォンやタブレットの利用比率が引き続き高まっているとのこと。利用比率が増えたことで、人々はニュースをより好きになっている、ニュースを読む人の数がかつてないほど多くなっているといいます。

 
New Disruption

YahooやHuffington Post、BuzzFeedといったPURE PLAYER(オンラインのみのメディア&プラットフォーム)が、トラディショナルメディアと同じくらい大きな影響力を持っているとのこと。

国別の比較でおもしろいと思ったのは、イギリスではトラディショナルメディアがスムーズにオンラインに移行できているため、日本やアメリカに比べてDisruptionが起きていないということです。アメリカでは、トラディショナルメディアとPURE PLAYERのオンラインでの影響力がほぼ同じ。日本ではYahooがオンライン上で一人勝ちをしている状態で、トラディショナルメディアのオンラインへの移行が遅れているといいます。

digital report3「トラディショナルメディアのウェブサイトとPURE PRAYERのどちらからニュースを得ていますか?」の質問に対する回答

 
Paying for News

このようにニュースのフィールドがデジタルに移っていても、オンライン上のコンテンツにお金を払ってもらうことはやはり難しいそう。オンラインニュースにお金を払っている人の割合は、イギリスで7%、日本で8%、アメリカでは11%。オンラインのコンテンツにお金を払ってもらう工夫を行うと同時に、イベントや物販などを組み合わせて収益を得ることが大事になってくるのでしょう。

digital report4オンライン上のコンテンツにお金を払っている人の割合

 
Reporter Role

ソーシャルメディアの時代になり、ジャーナリスト個人のブランドがメディアのブランドと同じくらい大事になっているとのこと。とくに個人のブランドが重視されがちなアメリカでは、スター記者が独立してメディアを立ち上げる事例が増えています。エズラ・クラインさんの「Vox」、ベテランジャーナリストがWSJから独立して始めた「Re/code」はその代表例でしょう。

Re/code:ベテランジャーナリストがはじめたテクノロジーメディア

digital report5@ezrakleinより

 
Social Networks

最後はソーシャルメディアのニュース利用について。facebookやtwitterはもちろん、海外ではWhatsApp、日本ではLINEといったメッセージアプリがニュースを伝える媒体として使われ始めているとのことでした。今後、ますますソーシャルメディアの生態系は複雑になっていくとニックさんは言います。

 

Q&A

続いて会場からの質問タイム。たくさんの質問が出ましたが、その中から僕がとくにおもしろいと思ったものをピックアップして、お二人の回答をまとめてみます。

 
―PVで評価されるオンラインでは、娯楽系のニュースが増えてしまうのではないでしょうか?

ニックさん(以下N):たしかに娯楽系のニュースは増えているが、それは今までトラディショナルメディアがやってこなかったもので、そこにマーケットがあるから。しかしこれからは読者を追いかけるためのPVという指標だけでなく、読者をつなぎとめるための質やエンゲージメントという指標が大事になってくるのでは。

 
―記者個人のブランドが高まっているという話があったが、自分の意見と合う人のみをフォローしてしまう状況にならないか?

N:ジャーナリストを追いかけることのひとつの基準は、価値を見いだせるかどうか。自分の意見と違うことはあってもその報道に価値があると思えば、フォローしてもいいのでは。私自身も意見に賛同できないジャーナリストをフォローしていますが、それは彼らの報道姿勢に価値があると思っているからです。

デイヴィッドさん(以下D):ジャーナリスト個人をフォローできることには、楽観的な面と悲観的な面があると思っています。プラスの面は、ジャーナリスト個人が多くのフォロワーを惹きつけブランドをつくることができること。マイナスの面としては、オピニオン主導のジャーナリズムが広がっていくことに対して懸念をしています。正確で中立な報道が価値を失っていくのではないかという心配があります。

digital report2

 
―日本のメディアが海外メディアから学べることは何でしょうか?

D:私は日本語がわからないので記事の質についてではなく、ビジネスや構造についてコメントします。日本の(トラディショナル)メディアは紙で大きな成功を収めているため、逆にデジタル化が遅れています。現時点で大きな収益があるからこそトライしていない。私からひとつレッスンを言うとすれば、新たな世界に早く適応すること。クライシスを待たずにデジタルに行くこと。

 
―海外メディアでデジタル戦略が進んでいる理由は?

N:イギリスの状況について話すと、多くのメディアがテクノロジーに投資をしているからだと思います。ニュースメディアはジャーナリズムだけでなく、パッケージングやディストリビューションについても考えていかないと生き残れない。彼らは企業文化を変えてでも技術者を雇っているのです。たとえばFTやガーディアンは、記者の人数を減らしてまでテクノロジーに投資をしています。生き残りたいのであれば、ニュースメディアはテクノロジーを強化しなければいけないと思います。

 

What’s Future of News?

会場からの最後の質問は、

―Digital News Reportの結果から、ニュースの未来はどうなると思いますか?

これに対してニックさんはこう答えます。

The future of news is very exciting.

N:新しい方法で、いろんなメディアを使ってストーリーテリングをすることができるからです。文章や映像に限らず、最適なメディアをミックスしてストーリーを伝えることができるのです。それから未来のニュースは、よりパーソナルなものになると思います。もちろん世界でどのようなことが起きているかという一般的なニュースを知る必要もありますが、個人に直結するようなニュースを知りたいという欲求が、これからさらに強くなってくるでしょう。
 

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